心配される自生地の生態系崩壊

 タヒボのふるさと、ブラジル・アマゾンは1960年代以降の大規模な開発の対象となり、この40年間で約20パーセント近くの面積が消失しました。当初この地域の開発は国防、資源開発、農牧畜、貧困の撲滅を目的として始められたのですが、現在、穀物メジャーが農産物の生産流通に深く関わり、この地域がグローバル化しつつあり、開発の圧力が高い状況です。 このまま開発が進めば今後20年間でさらに20パーセントが失われ、タヒボの自生地を含むこの地域の生態系が崩壊すると考えられます。  熱帯雨林に降る雨の半分は同じ森林から蒸発した水ですが、森林面積の減少により降水量が減り残りの樹木を枯らし、更に森林面積の減少を加速させます。

大豆生産地の拡大による影響

 ブラジルは1990年代に入ると農業生産量を飛躍的に増加させ「アグリビジネスの巨人」として世界的に注目されるようになります。穀物生産量は1990〜91年度の5790万トンから2002〜03年度には1億2240万トンと12年間で倍増。中でも大豆は1540万トンから5200万トンと3.4倍と爆発的な増加です。
 大豆は本来、温帯で栽培されるもので、熱帯に育つタヒボとは違う場所で生育するものでした。1950年代にヨーロッパから持ち込まれて以来、しばらくは南部及び東南部諸州の温帯地域に限定的でしたが、1990年代になり、法定アマゾン地帯南端部でセラード植生の地帯の農地化が急速に進み、大豆生産地域へと組み込まれるようになります。この地域は法定アマゾン全体の20パーセントにあたる約8500万haに及びます。品種改良や栽培技術の進歩で熱帯地域での栽培が可能になると、タヒボにも少なからず影響があると考えられます。
 今日、ブラジル最大の大豆栽培地域で、現在も急速に栽培面積の拡大を見せる地域は、法定アマゾン南部から東南部へ広がる「森林破壊の弓状地帯」と呼ばれる地帯です。この地帯はマトグロッソ州からパラ州まで南北約1800kmに及ぶ大豆ハイウェイと呼ばれるBR163号線や、アマゾン横断道路BR230号線にそって北上してきました。それらの輸出用道路建設がタヒボが自生する熱帯林を破壊する主因になるとの懸念が高まってます。

GMO遺伝子組み替え大豆への懸念

 そしてルーラ政権下2003年9月に遺伝子組み替え大豆の栽培を承認します。 このことは世界の食料安定供給にとって積極的な意義を持ちますが、 遺伝子組み替え大豆が自然環境を汚染し、生態系に悪影響を与えることが懸念されており、環境保全の観点からは問題があると考えられます。

止まらない違法伐採

 天然木の輸出はこの地域の経済活動の重要な資源であり、マホガニーなど高価で需要の大きい木材は行政機関の監督が行き届かない地域で違法な伐採が進んでいます。 総延長が17万kmにもなるとみられる林道が無数にありますが、これらの多くは高価な樹木を違法に伐採、運搬するために無許可で造られたものです。 伐採が終わると業者に代わり「グリレイロ」と呼ばれる人々が土地を不法占拠しようとやって来ます。彼らによって自然環境を改変されることが懸念されます。 「グリレイロ」の語源はポルトガル語の「コオロギ」を意味する「グリロ」で、彼らは偽造した土地の権利書をコオロギと一緒に引き出しに入れて汚し、その権利書がいかにも古いように見せかけるため、このように呼ばれるようになりました。


原料を取り巻く環境について